「栄養士として就職するの委託ってどうなんですか?」
栄養士が就職先として最も多い場所。
それが、「委託給食会社」です。
みんなが「委託」と呼んでいるものですね。
最も栄養士が多いにも関わらず、最も人気がないのがこの「委託」です。
では「委託」」に入った栄養士はどんな仕事をするのか。
今回はそれをお伝えします。
正確にはクライアントから給食業務を「受託」しているので、「受託給食会社」
クライアントから見たら給食を「委託」しているので、「委託給食会社」
立場で呼び方は変わりますが、ここでは「委託」で統一してお話しします。
栄養士の働く職場「委託」とは
委託の栄養士の主な仕事
さまざまな場所が職場
委託の栄養士の仕事は給食業務を請け負って企業の社員食堂や、学校給食、病院食、老人ホームなどの食事を作るのが仕事です。
さまざまな場所に配属はされていますが、あくまで所属しているのは受託給食会社です。
配属先の病院や介護施設はクライアント(お客様)になります。
そのクライアントとの業務契約のなかで請け負う業務内容や権限が決まります。
仕事内容は配属先によりますが、調理業務、帳票事務、献立作成、発注業務などを行ないます。
実際にどんなことをしていたか
僕の経験から、委託での実際の仕事についてお話ししたいと思います。
僕は以前とある大手の委託に勤めていました。
そこで最初にリハビリをメインとしている神奈川県の病院に配属されました。
そこでの仕事は食事の盛り付け、食器洗浄、調理業務、帳票作成、小口現金の管理などです。
僕は管理栄養士として就職しましたが、今上述した仕事のなかで栄養学の知識を必要とするものはほとんどありません。
まずは献立通りに調理して、盛り付けることができる。
その他の帳票作成などは単純な事務作業ですし、小口現金などは簡単な簿記の知識があれば十分です。
(といってもマニュアルがありますので知識もほとんど不要です)
※ここでいう「栄養学の知識」とは「食を通じて誰かの健康に役立つようなことを伝えられる知識」です。
いわゆる、これが「栄養学」だと思っていますので。
献立作成もない
「あれ、献立作成はないの?」と思った方もいるでしょう。
僕が担当していなかったのではなく献立作成はありません。
献立作成は直営の病院栄養士がやっているからです。
献立作成業務は直営の栄養士が行うため、委託側は行わないパターンはよくあることです。
もちろんある程度は献立のことは理解しています。
ですが、献立に対しての栄養学はなくても、その通りのものが作ることできればいいです。
つまり、僕の仕事は
・直営の栄養士の献立通りに食事を作れる
・盛り付ける技術と食器を効率よく洗う技術
・事務仕事をマニュアル通りにこなせる
これができていれば委託の栄養士としては優秀です。
ただ、これが栄養士の仕事かというと違うと思いますが。
栄養の知識からは離れていく
これが実際にしていた仕事がです。
この仕事では栄養の知識が身につくはずはありません。
ここで「あなたの環境が特殊なのでは?」と思った方もいるでしょう。
残念ながらそうではありません。
次に献立作成がある病院に配属された栄養士の仕事を紹介します。
その人は受託給食会社に就職し、とある大学病院に配属されました。
そこでは献立作成業務は受託給食会社が請け負っていました。
「献立を作るには栄養の知識が必要である」
そう思った方は間違いです。
実はほとんど必要ないのです。
なぜなら献立も会社の中である程度マニュアルがあり、それを編集する程度だからです。
自分で一から献立をつくることもあります。
ですが、そのときも大事なのは栄養素の数字をみて作るのがメインなので栄養の知識はあまり必要ないのです。
必要なのはある程度の調理経験と適正な調味料の使用量、料理のレパートリーなどです。
食品のビタミンが多いとかたんぱく質が多いとか数字上のことは覚えられるとは思いますが、そこから先の知識は必要とされないことが多いのが現実です。
つまり「自分たちが作っている食事を患者さんや入居者さんが食べることでどうなるか」はわかっていません。
ここが大切なことなのですが。
言い方は悪いですが興味無い方もいます。
数値上栄養素が取れている食事を作って提供すれば仕事は終わりです。
そこから先の知識は直営の栄養士にならないと必要ないのです。
もちろん受託給食会社に勤めている栄養士のすべてがこうではありません。
中には「わたしは日々勉強してちゃんと栄養の知識を持っている!」という方もいるでしょう。
素晴らしいと思います。
おそらく勉強熱心で自ら積極的に栄養学を学んでいる方だと思います。
そういった優秀な方はどうなるのか?
きっと会社の中で出世していくことでしょう。
でも出世したことで栄養の知識がなくなってしまう可能性がでてきてしまうのです。
それがどんな仕組みなのか、今度は受託給食会社の栄養士のキャリアプランについてお話しします。
出世すれば栄養士らしく生きられる?
出世=マネジメント
受託給食会社に勤めている栄養士は出世すると、多くはその配属先の責任者を任されます。
呼び名は会社によりさまざまですがここでは「支配人」と呼ぶことにします。
支配人の仕事は経営管理、労務管理、マネジメント管理、人事管理などです。
事業所の責任者ですからクライアントの契約金の中で会社として利益を確保しなければなりません。
人件費や食材費の見直しによるコスト管理、パートさんたちとコミュニケーションをとって事業所を円滑に運営していかなければなりません。
この仕事は栄養の知識を必要とする仕事ではありませんよね?
そうなのです。
出世すればなおさら栄養の知識は必要とされず、事業所を運営する経営者のような知識が必要とされるのです。
今まで栄養の勉強をしていたとしても、その時間の確保は難しくなってしまうでしょう。
さらなる出世でちょっと希望が
ただし、さらに出世すれば、会社によっては社内の栄養のスペシャリストとして若手栄養士に栄養学を伝える立場になれる方もいます。
そういう方なら栄養の知識が必要です。。
そこまで、出世できれば栄養学に関われるやりがいのある仕事かもしれません。
ただし、その立場になれるのはほんのわずかです。
僕の会社では正社員数は4000人以上いましたが、その立場になれるのは片手で数えられます。
また、その立場になるまでにはかなりの時間がかかります。
栄養士なのに栄養学を必要とする仕事は時間がかかる。
さらに時間をかけてもなれるかどうかはわからないということです。
ほとんどの栄養士は出世すればするほど栄養の知識から遠ざかっていってしまうのです。
まとめ
おすすめはしないですがあなた次第
あならのしたいことは難しいかも
栄養学を生かしたかったら委託では難しいかもしれません。
僕個人としては委託は就職先としてはおすすめしません。
ただ、あなたがどんな仕事をすれば、やりがいを感じることができるのか?
それはあなたにしかわかりません。
委託を否定しているのではなく、価値観の問題です。
栄養士でもマネジメントが好きな人もいるでしょうし、すべての委託が僕はお話ししたような場所ではありません。
結局は働いてみないとわからないのです。
ただ、現実として僕の周りの多くの栄養士は委託をやめています。
そして、委託に勤めている栄養士もずっと委託にいるつもりはないと言っています。
これは、事実です。
自分の価値観との折り合い
ですが、委託給食会社自体は必要です。
委託も栄養士に人気がなくなっているのはわかっていますから、これからは委託会社も変わっていかなければならないでしょう。
あなたが現時点でどの職場を目指すのかはあなたの自由です。
自分の価値観で栄養学ではなく、他の条件もあるでしょう。
その価値観が満たせるような職場を選び、それが委託ならそれでもいいです。
実際に働いてみないとわからないのはどこの職場でも同じです。
1つの参考になれば幸いです。