最近ではいろいろな油が注目されるようになってきました。
ただし、まだまだ「油=摂りすぎてはいけないもの」と認識している人が多いです。
正しくは「悪い油=摂りすぎてはいけないもの」です。
あなたは油選びに自信がありますか?
もし、なかったらあなたの体調不良やアレルギーは油が原因かもしれません。
今日はそこで栄養士が知っておいてほしい油の知識についてお話しします。
栄養士に知っておいてほしい「油」の話
油とは
まずそもそも「油」とはなんなのでしょうか?
インターネットで検索してみると油とは
「動物や植物、鉱物などからとれる水と相分離する疎水性の物質。
一般に可燃性であり、比重が小さく、水に浮く。
常温で液体のものを油、固体のものを脂と使い分けることがある。」
このように表記されています。
科学的な考えでは正しい油はわからなそうです。
本来であれば「油」と「脂」は使い分けるべきかもしれません。
ただ、今回は僕らがふだん食べている食品の「脂質」のことを「油」と表現させていただきます。
中性脂肪とコレステロール
僕らがふだん食べている油の成分は大きく2つに分けることができます。
それが中性脂肪とコレステロールです。
これは、どちらも「脂質」の一種で油です。
中性脂肪
僕たちの体で蓄えられている「貯蔵脂質」
一般的に体についている脂肪やエネルギーはこっち。
コレステロール
体内の細胞膜の材料になったり、ホルモンの材料になる「構造脂質」
植物にはほとんど含まれない。
どちらも同じ「脂質」だが、役割は異なります。
これから出てくる「油」はこの2つの成分の必要性についてお伝えしています。
油は体に良くないのか?
先に答えを言ってしまいますが、油は体にとって不可欠なものです。
「油は太る」
「油は体にとって良くない」
この認識は間違いです。
ではなぜ、油が体にとって良くないものだと思われてしまっているのか?
きっかけがあったはずですよね。
実は、あるウソから油への誤解が広まってしまったのです。
発端はある科学者のウソから始まった
1950年代「アンセル・キーズ」という科学者が「飽和脂肪酸は体に悪い」という研究を始めました。
この研究にはアメリカが多額の資金と研究に投資し、22か国を対象としたかなり大規模な研究です。
研究結果ではたしかに「悪い油」を食べていれば、たしかに病気になる確率は上がっていました。
ただ、「いい油」を食べていた人たちはむしろ病気になる確率は低かったのです。
22か国中油が体に悪いという研究結果はたった、7か国だけ。
他の国は変わらない。または、むしろ油をとった方がいいという結果に終わりました。
しかし、「油は体に悪い」というデータを発表したかったキーズ博士は悪い方のデータのみを発表。
このキーズ博士が出した一部の油がダメだというだけのデータは、まるですべての油が体に悪いというような結果に改ざんし、その誤解が全世界に広まってしまったのです。
油が体に悪いのはもともとウソからはじまっています。
しかし、一度広まってしまうとなかなかその誤解は解けません。
実際に今の社会で広まっている油=体に悪いという解釈はこの50年以上前の研究結果のせいです。
僕たちは、油に対しての正しい知識を覚えることが重要です。
では油が体の中でどんな役割を担っているのか?
次はそれをお話しします。
油の役割とは
油には様々な役割があります。
油の役割は以下の通りです。
エネルギー源になる
人間の体のエネルギーになるのは糖質、脂質、タンパク質です。
これらは体の中で分解されて最終的にはグルコース、遊離脂肪酸になりこれらをエネルギー源としています。
油はこのグルコースと遊離脂肪酸の両方を作ることができるのです。
グルコースの特徴
すぐにエネルギー源として使えます。
ただし、体に蓄えることができる量が少ないです。(およそ2000キロカロリー)
短期的に使う分には効率がいいですが、実はエネルギー源としてはあまりいいものではないとも言われています。
遊離脂肪酸の特徴
エネルギーとして使うのが糖質よりは時間がかかります。
ただし、体に大量に蓄えることができます。(およそ40000キロカロリーで糖質の20倍)
グルコースは油からも作れる
中性脂肪は分解されると遊離の脂肪酸とグリセロールという成分になります。
このグリセロールは体の中でグルコースを作り出せます。
また、油はグルコースがなくなった場合でも「ケトン体」という成分を生み出します。
これが、脳のエネルギー源として働くので、糖質がなくても人は生きていけるということになります。
しかし、油がなくなると人は生きていくことができません。
細胞膜の材料になる
体の中の細胞膜はリン脂質とコレステロールから形成されています。
人間の体は60兆個の細胞の集合体。
このすべの細胞が細胞膜に覆われていて、その細胞膜の全てに油が必要です。
細胞膜は体を外敵から守るバリア機能や、栄養素や酸素を取り込む機能を担っています。
また、細胞内で発生した老廃物の排出なども行っています。
油をとらなければ細胞膜の材料が無くなってしまい、これらの機能が正常に働かなくなります。
すべての細胞を新しく生まれ変わらせていくのにも油が必要だということです。
ホルモンの材料になる
コレステロールは体の機能を調節するため必要なホルモンの材料です。
副腎皮質ホルモン⇒免疫機能に欠かせない
インスリン⇒血糖値を下げる
アドレナリン⇒交感神経と副交感神経の調節etc…
他にもさまざまな機能を持つホルモンがあります。
これらのホルモンを作り出すためにも油が必要です。
人が正常に生きていくためには油が必要なのです。
ビタミンの吸収を助ける
脂溶性ビタミンの吸収には油が必要です。
せっかくビタミンをとっても油を食事から摂取しなければうまく活用されません。
油の不足はビタミン不足にも関わってしまうのです。
ビタミンの大切さは誰もが聞いたことがあるでしょう。
一応、脂溶性ビタミンの効力についても伝えておきます。
脂溶性ビタミン
ビタミンD
骨の形成、免疫力の向上など
ビタミンA
活性酸素の除去、髪や皮膚、粘膜の強化。免疫力の向上など
ビタミンK
動脈硬化、骨粗しょう症の予防など
ビタミンE
抗酸化、細胞膜の機能向上、血行促進など
これらの機能を保つためにも油が必要です。
絶対に必要な油
油が体の中でどのような役割をしているのかはお分かりいただけたでしょうか?
次はその中でも油を摂らなければどうなってしまうのかに注目してお伝えします。
油を摂らないデメリット
太る
高カロリー=太るは間違い。
食べた油が体の「脂肪」に変わるのには「糖質」が必要です。
これはつまり油だけを食べても太らないということです。
ある実験結果があります。
それは対象を3群に分けて、その健康状態、そして体脂肪率の増加を判断するという実験です。
油=高カロリーであれば油だけを食べ続けるのが一番太りますよね。
その実験はこのような結果になりました。
・糖質のみを食べる⇒太る
・油のみを食べる⇒太らない
・糖質と脂質を食べる⇒太る
油のみを食べた人は太らなかったのに、糖質のみを食べた人は太りました。
そして、油と糖質、両方を食べた人が一番太りました。
これは先ほどの油が脂肪に変わるのには糖質が必要だからですね。
ただ、注目してほしいのは糖質のみを食べた人も太るということです。
体を動かすのにはエネルギーが必要です。
油を食べなければ、結果的に「糖質」の摂取が相対的に多くなる。
糖質は単体でも太ります。
つまり糖質を摂る量を減らせば太りにくくなります。
しかし、糖質と脂質のバランスで油を食べずに糖質の量を増やせば、太ってしまいます。
結果的に、油を摂らなければ太ってしまうのです。
炎症が起きやすくなる
炎症の一番の原因は食べ物由来によるものです。
炎症を引き起こすような有害物質は体の中に脂質に溜まりやすいです。
溜まっても正常に体の外に排出できれば問題ないのですが、油を摂らないとそうはいきません。
細胞膜の材料である油を摂らないと細胞が弱くなります。
そして、細胞が弱くなると、悪い物質を体の外に出す力が弱まります。
つまり、油を摂らないことで体の外に有害物質を出す働きが衰えて、炎症が起きやすくなるということですね。
脳の機能が低下する
脳の6割は油でできています。
油を摂らないと脳を正常に働かすのにも油が必要です。
脳の油が足りなければ、脳に必要なホルモンや神経伝達物質が作れない。
その結果、脳の機能は低下してしまいます。
つまり、油を摂らないことで認知症屋アルツハイマーなどの脳の疾患にかかりやすくなるのです。
いかがですか?
油を摂らないデメリットはこれだけあります。
油が必要なことはおわかりいただけたでしょう。
しかし、ここで気を付けて欲しいことがあります。
それは油はとても大切なのですが、どんな油でもいいというわけにはいかないのです。
次は選ぶべき油についてお話しします。
知っておきたい脂肪酸
どんな油がいいのかをご説明する前に知っておいてほしいのが「脂肪酸」についてです。
これは油を選ぶうえで参考になることです。
脂肪酸は「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」にわかれます。
飽和脂肪酸
常温で個体。動物性のアブラに多い。
不飽和脂肪酸に比べて、酸化しにくいため高温での加熱に適している。
不飽和脂肪酸
常温で液体。植物性のアブラに多い。
一価不飽和脂肪酸(オメガ9)と多価不飽和脂肪酸(オメガ3、6)
この2つに分かれます。
そして不飽和脂肪酸はさらにオメガ3、オメガ6、オメガ9にわかれ、それらにも特徴があります。
オメガ9
比較的、酸化しにくい。
皮膚の老化防止、保湿効果あり。
オメガ6
酸化しやすい。
血液凝固作用、炎症促進作用、アレルギー促進作用
オメガ3
特に酸化しやすい。
血管拡張作用、炎症抑制作用、アレルギー抑制作用
飽和脂肪酸に比べて酸化しやすいため、高温での加熱には不向き。
脂肪酸によって、このような特徴があります。
もし、油に入っている脂肪酸の種類がわかれば、調理法や保存方法などを判断することができるようになります。
栄養士や健康分野の資格をお持ちの方はここまで理解できていると油選びには困らないでしょう。
さて、次は実際に選んでほしい油についてお話しします。
正しい油の選び方
油には摂って欲しい油と、できれば避けて欲しい油があります。
基準は人によって微妙に違います。
今回、僕が選んだものですが、僕なりの基準があります。
摂って欲しい油に関しては食卓に比較的取り入れやすい。
そして、それなりの効果が期待できるもの。
摂らないでほしい油に関して、日常的に摂ってしまいがちなもの。
そして、その有害性がかなり高いものです。
ここに取り上げた油以外にもいろいろありますが、その基準で選んであるということだけご理解ください。
以下にそれらの油のメリット・デメリットまとめましたので参考にしてください。
積極的にとって欲しい油
ごま油
1 コレステロールの改善
オメガ6のリノール酸が50%入っている。
リノール酸は悪玉コレステロールを減少させる効果がある。
2 過酸化脂質の抑制
残りの50%はオメガ9のオレイン酸。
オレイン酸は過酸化脂質の発生を防いで生活習慣病を予防する。
3 細胞の老化防止・ガンの抑制効果
ごまに含まれるセサミノールやゴマリグナン、ビタミンE。
これらの成分は抗酸化成分が豊富。
そのため、細胞の老化の進行を遅らせることができる。
また、ガンの抑制効果も期待できる。
4 加熱に強い
加熱に強いのも特徴です。弱火、中火、さっとなら強火でも大丈夫。
強火の調理に耐えられるものは少ないので貴重な油である。
また、風味もよく食べやすいので普段の生活にもとりいれやすい。
5 安価である
ごま油の選ぶ基準ですがコールドプレス製法で作られたものがベスト。
ただし、当然値段が高くなる。
ただ、ごま油のいいところは普通の製法のものであっても栄養成分が比較的維持されている。
日常でサラダ油を使っている人は、ごま油への交換をおすすめする。
エクストラバージンオリーブオイル
1 酸化しにくい(加熱には弱い)
必須脂肪酸のオレイン酸が豊富で酸化しにくい。
2 デトックス効果
「クロロフィル」という色素による体内の毒をデトックスする効果がある。
3 コレステロールの調節
オレイン酸は、胃酸分泌の調節、腸の働きを活発にする。
悪玉コレステロールを減少させ、善玉コレステロールを増加する。
4 がん細胞の死滅、心疾患や脳卒中の予防
オリーブオイルに含まれるポリフェノールの「オレオカンタール」
この成分ががん細胞のリソソームの死滅。
また心筋梗塞や脳卒中を防ぐ作用があるとされている。
4 食べやすく、使いやすい
比較的、味にクセがないので食べやすい。
保存も常温で可。強い加熱はできないが、サラダのドレッシングに使ったり低温での加熱なら大丈夫。
天然の青魚(いわしなど)
1 血中の中性脂肪をへらす
オメガ3のDHA,EPAは血中の中性脂肪を減らす効果がある。
2 認知症予防・記憶力・学習能力の向上
同じくDHA,EPAは子どもの発育や脳機能に影響があり、さまざまの効果が期待できる。
3 オメガ3は魚から摂るのがベスト
非常に酸化しやすいオメガ3の油は液体状のものでは製造過程で酸化している可能性が高い。
また、植物性のオメガ3はDHA,EPAに体内で変化するが少量しかできない。
そのため、オメガ3を摂取するには天然の青魚を生で食べることがもっとも効果の高い食べ方である。
できる限り避けて欲しい油
マーガリン(トランス脂肪酸)
1 あらゆる病気を誘発する
心臓病、糖尿病、ガン、不妊症
子宮内膜症、うつ・認知症
2 からだは食べ物だと認識していない
プラスチック食品とも呼ばれるマーガリン。
からだの中では食べ物だと認識されていない。
サラダ油
1 遺伝子組み換え食品の危険性
サラダ油の原材料のトウモロコシや大豆は遺伝子組み換え食品である可能性 が高い。
遺伝子組み換え食品の割合が非常に高い米国では遺伝子組み換え食品の出現と共にガン、白血病、ア レルギー、自閉症などの慢性疾患が急増している。
2 製造過程でトランス脂肪酸が発生
加工の過程で「トランス脂肪酸」が発生。
また、発がん性物質の「ヘキサン」もその加工過程で使用されている。
さらに加熱により油が酸化。
「酸化した油」によって引き起こされる症状は老化現象、がん、炎症疾患、 アトピー、シミ、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病がある。
キャノーラ油
1 サラダ油と同じ遺伝子組み換えの可能性が高い
キャノーラ油の原材料であるキャノーラという菜種も遺伝子組み換えの可能性が高い。
2 サラダ油と同じ製造方法
サラダ油と同じ製造過程で高温、科学抽出されるためトランス脂肪酸の発生、ヘキサンによる発がん性の危険性あり。
3 遺伝性のある毒性
キャノーラ油の毒性は脂質のため、親から子へ引き継がれる危険性がある。親がキャノーラ油を常食すると子どもが短命になるとされる。
まとめ
油を食べることは重要。
でも正しく油を選べることはもっと重要。
いかがでしたでしょうか?
油が体にどれだけ大切かご理解いただけたでしょうか?
また、それ以上に油選びの大切さもご理解いただけたでしょう。
他にもまだまだ油については語りきれませんが、まずはこれだけ知っておいてもらえれば大丈夫です。
摂るべき油と避けるべき油を理解してこれからの自分の体を大切にしていきましょう。