「栄養士ってことは料理得意なんですか?」
きっと、あなたが栄養士を名乗ったことがあるのなら質問されたことがあるでしょう。
栄養士=料理が得意という世間の認識はありますよね。
でも、実は調理が苦手な栄養士は意外と多いです。
仕事で必要であれば身に付けるでしょうが、調理をまったくしない職場もあります。
そういった場合でも調理技術は身につけておくべきか?
このような悩みを考える栄養士もいるでしょう。
今回は日本料理の板前⇒受託給食会社の管理栄養士⇒直営病院の管理栄養士⇒フリーランス栄養士。
この4つ職業を経験した僕の経験から栄養士に調理技術が必要かどうかをお伝えします。
栄養士に調理技術本当に必要なのか?
あったほうがいいことは間違いない
結論から言います。
それは「あるにこしたことはない」です。
あなたがどんな職場で働くにせよ、「栄養士」という肩書きを背負って働いているのなら「食」に関わります。
「食」に関わる以上調理技術があったほうがいろんな場面で役に立ちます。
・献立を考えるとき
・調理師と話をするとき
・栄養指導をするとき
・普段の生活をするとき
など
調理技術があったほうが、仕事が円滑に進むことは多いです。
ですから、どちらかがいいかといえば「調理技術はあったほうがいい」という結論ではあります。
調理技術は必須ではない
ただし、「調理技術があったほうがいい」は間違いないのですが、「絶対に必要か?」という質問には僕は「NO」です。
実際に調理技術がなくても、栄養士としては働けます。
そして、それはこれからの栄養士の可能性を広げるためにも必要です。
調理師と栄養士の違い
あなたは「調理師」と「栄養士」の違いはなんだと思いますか?
もっと言うと「調理師」と「栄養士」そし「管理栄養士」の違いはなんでしょうか?
これらの職業は「名称独占」であり「業務独占」ではありません。
・業務独占
資格がなければその業務が行えない。資格がない状態でその業務を行うと刑罰の対象となります。
医師、看護師、准看護師、薬剤師、診療放射線技師など、多くの医療資格が当てはまります。
・名称独占
資格がなくてもその業務が行えます。しかし、資格がなければその名称を名乗れません。
理学療法士、作業療法士、調理師、栄養士、管理栄養士、社会福祉士などが該当します。
つまり、「名称独占」であるこれら調理師・栄養士・管理栄養士の3つの肩書きはどんな仕事をしてもいいことになります。(厳密に言うと「管理栄養士」に関しては一部「業務独占」の仕事もありますが、ここでは詳しくは触れません)
法律上の違いがない場合、ではこの3つの職業はどう違うのか?
僕は「覚悟」の違いだと考えています。
簡単言うと、栄養士、管理栄養士自身が「自分の仕事はなんなのか?」この質問に関してどのように答えるのかが決まっているか、ということです。
僕はもともと調理師で板前をやっていましたので正直、調理技術は高い方です。
しかし、現在の仕事で調理技術は全く必要としていません。
むしろ、僕はあえて使わないようにしています。
それは現在の僕の栄養士キャリアアップコンサルタントという仕事に対して調理技術は必要ありませんし、自分の仕事が「調理」ではないと決めているからです。
必要かどうかを決めるのはあなたです
たとえば、あなたが病院の栄養士として就職したとしましょう。
給食は委託しているので、普段のあなたの仕事の中に調理は全くありません。
普通に過ごしていたら調理技術は身に付かないでしょう。
しかし、あなたが栄養指導・相談をするのが誰よりも得意だったら?
病態の知識が誰よりも詳しくて医師や薬剤師とも同じくらいのレベルで話ができたら?
調理技術は必要あるのでしょうか?
僕は調理技術がなくても仕事はできると思っています。
むしろ、あなたが調理技術を高めている暇があるのなら、その時間をもっと別のことに使った方がいいと考えています。
あなたが目指そうとしている「栄養士」に調理技術が必要なのか?
それを決めるのは「あなた自身」です。
調理技術と料理の知識を混同しない
「調理技術が高いこと」
「料理の知識がある」
よくこれを混同している人がいます。
しかし、この2つは違います。
わかりやすく言うと「オムレツ」をフライパンでトントン作ることが出来る」のが「調理技術が高いこと」
一方、「オムレツの作り方を知っている」のが「料理の知識がある」ということです。
この「料理の知識」に関しては、僕はある程度は「必須」だと考えています。
作れなくてもいいですが、作り方くらいは知っておいたほうがいいのです。
「栄養士」の肩書きから「料理」は切り離せない
会社員の栄養士、フリーランスの栄養士ではさまざまな仕事をしています。
・発注・検収業務
・献立作成
・調理業務
・栄養指導・相談(スポーツ選手、患者、子ども、親、ダイエット、栄養士)
・栄養セミナー
・料理教室
などなど、いろんな仕事ができます。
そして、僕が知る限りでありますが、大抵は「料理の知識」が必要です。
・発注や検収業務
発注するときに食材の重量や、料理に対しての使用量がわかっていないといけません。
検収も発注された量がきちんと納品されているかどうかを確認する作業ですが、食材の種類や状態の見極めが最低限は必要です。
先ほどの「料理の作り方」の手前の知識になりますが、「料理の材料や使用量」を知っておかないといけません。
もちろん、ある程度はマニュアル化されているのですが、「料理の知識」があったほうがミスを減らせることは間違いないです。
・献立作成
「料理の知識」がないと献立は作成できません。
知識がなければ、現実的でない献立や、食材の使用量が正しくない献立ができます。
献立作成をするのなら「料理の知識」はもちろんのこと、できれば「最低限の調理技術」があったほうがより良い献立を作ることができます。
・調理業務
調理をするのなら「料理」についての知識は必須です。
作業として「調理」をしている人もいますが、調理の目的は「対象に食べてもらうこと」です。作って終わりではありません。そのために「味」は当然ですが、
今自分が作っているのが一体何の料理なのか?わからないで作るということはありえません。
調理を仕事に組み込むなら料理の知識は身につけましょう。
・栄養指導・相談業務
これは患者やクライアントの食生活を改善するのが目的です。
その時に、じゃあ実際にどんなものを食べればいいのか?を確実に聞かれます。
そのときに料理の知識がないと相手に答えることができません。
食材の栄養素を知っていても、実際にその食材を普段の生活にどのように取り入れるべきなのか?それを伝えなければなりません。
ですから、「調理技術が高い」必要はありませんが、「料理の知識」は必要です。
・栄養セミナー
僕自身、この栄養セミナーも仕事の1つとして取り入れています。
テーマとしては「調味料の選び方」や「糖尿病に対しての食事」、「ビタミン、ミネラルについて」など、いろいろなテーマで開催します。
セミナーの内容だけなら料理の知識が必要ないこともあります。
しかし、セミナーであれば「質問」があります。
セミナーを受けてくださった人からの質問に答える場合はかなりの確率で料理の知識が必要です。
また、料理の知識があったほうがセミナーのテーマの幅も広がります。
仕事の幅を広げる意味でも料理の知識を高めたほうがいいでしょう。
・料理教室
タイトルに「料理」の単語が入っている時点で必要なことはわかりますよね。
料理教室であれば、調理の技術も必要です。
特にフリーランスの栄養士として活動する人にはこの料理教室をやろうとしている人が多いです。
そういった人たちは料理の知識はかなり重要になります。
まとめ
「調理技術はあるにこしたことはない」が「料理の知識はある程度必要」
いかがでしたでしょうか?
あなたが調理があまり得意でなかったとしても、自分の仕事しだいでは問題ないことがわかっていただけたでしょうか?
それと同時に「栄養士」の肩書きを名乗るのであれば「料理の知識」は必要だということもわかっていただけたでしょう。
大事なことはあなた自身が「自分の仕事はなんなのか?」これを考える必要があるということです。
これから自分がどのような栄養士を目指すのか?
考えるきっかけにしてみてくださいね。